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社労士事務所の社員の属人化の解決方法

中小企業の労務事務を支援する会社では、給与計算や各種手続き、就業規則の整備など、正確さが求められる業務を継続的に行います。

そのため、

「この会社のことは担当者しか分からない」
「ベテラン社員が休むと確認に時間がかかる」
「繁忙期になると特定の社員へ仕事が集中する」
「新人へ仕事を教えるのに時間がかかる」
「社員を増やしても仕事を任せられるまで時間がかかる」

といった属人化が起こることがあります。

今回ご紹介するのは、大阪府で中小企業向けの労務事務を支援する従業員27名の企業で、担当者に集中していた業務を整理し、業務プロセスの標準化とマニュアル化を進めた事例です。

目指したのは、専門的な判断まで一律にすることではありません。

共通化できる業務は会社の仕組みに変え、専門的な判断やお客様への対応に、社員がより力を使える組織づくりを進めました。

今回のお客様は、大阪府で中小企業の労務事務を支援する従業員27名の企業です。

給与計算や社会保険・労働保険に関する手続き、助成金支援、就業規則の整備など、継続的な顧客支援を行っていました。

大きな経営課題となっていたのが、手作業の多さと担当者へのノウハウの集中です。

【お客様の課題】

給与計算や各種手続きの進め方が、
担当社員の経験に依存している。

顧客ごとの注意事項や過去の経緯が、
担当社員の中に蓄積されている。

業務の一部に手作業が多く、
担当者の負担が大きくなりやすい。

繁忙期になると、
一部の社員へ仕事が集中しやすい。

担当社員が休んだ場合、
他の社員がすぐに代わりにくい。

新人へ仕事を引き継ぐ際にも、
担当者によって教え方が異なっている。

この状態では、顧客数を増やしても、それに比例して担当者の負担が増えてしまいます。

さらに、休職・退職などで担当者が不在になると、サービス品質を安定させにくくなる可能性もあります。

そこで、

「担当者が覚えている会社」

から、

「会社として業務と知識を共有している組織」

への転換を進めました。

労務事務では、毎月・毎年繰り返す仕事が多い一方で、顧客企業ごとに条件や対応方法が異なる場合があります。

例えば給与計算でも、

給与体系
締め日・支払日
勤務形態
手当
勤怠情報
確認事項

などが企業によって異なります。

継続的に担当している社員ほど、

「この会社ではここに注意する」
「この時期にはこの確認が必要」
「このケースではこの情報を確認する」

といった知識を持つようになります。

これは担当者の大切な経験です。

しかし、その情報が担当者の記憶だけに残っていると、その社員が不在になったときに他の社員が対応しにくくなります。

個別対応と属人化を分けて考える

顧客企業ごとに条件が違うからといって、すべての仕事を担当者任せにする必要はありません。

例えば、

依頼を受ける
必要資料を確認する
不足情報を確認する
処理を行う
内容を確認する
顧客へ連絡する
記録を残す

といった基本的な流れは整理できます。

一方、専門的な判断や個別事情への対応は、担当社員や責任者が行います。

つまり、

「お客様ごとに対応を変えること」

と、

「仕事の進め方まで担当者しか分からないこと」

は別の問題です。

自社に次のような状態がないか確認してみてください。

1.担当者しか顧客企業の詳しい状況を把握していない
2.給与計算などの確認方法が社員によって違う
3.顧客ごとの注意事項が担当者の記憶に頼っている
4.同じような業務でも社員によって作業時間に差がある
5.業務手順が文書化されていない
6.繁忙期に特定社員へ仕事が集中する
7.担当者が休むと他の社員が対応しにくい
8.新人教育の内容や順番が教育担当者によって違う
9.過去の対応事例や判断理由を探すのに時間がかかる
10.顧客数を増やすほど社員の負担も増えてしまう

複数当てはまる場合には、

「さらに人を採用する」

ことだけでなく、

「現在の仕事を他の社員でも進められる状態になっているか」

を確認することが大切です。

1.現在行っている業務を洗い出す

給与計算、各種手続き、顧客対応など、社員が日常的に行っている仕事を整理しました。

2.業務の流れを見える化する

依頼を受けてから完了するまで、誰が何を行っているのかを確認しました。

3.顧客ごとの注意事項を共有する

担当者の記憶だけに頼らず、他の社員も必要な情報を確認できる状態を整えました。

4.繰り返し業務の手順を標準化する

毎月・毎年行う業務について、基本的な作業手順と確認項目を整理しました。

5.チェック項目を明確にする

ミスを防ぐために、どの段階で何を確認するのかを共有しました。

6.業務マニュアルを整備する

文章だけでなく、実際に仕事を行う社員が使いやすい形で手順を整理しました。

7.担当者以外でも対応できる仕事を増やす

一つの業務を複数の社員が担当できる状態を目指しました。

8.過去の対応事例を共有する

問題が起きた際の状況、対応内容、判断理由を会社の知識として蓄積しました。

9.新人教育とマニュアルを連動させる

新人が何をどの順番で習得するのかを整理し、教育担当者だけに依存しない育成方法を整えました。

10.標準化とノウハウ共有を人事評価につなげる

労務事務の標準化では、単にマニュアルを増やすのではなく、仕事全体の流れを整理することが重要です。

例えば、

顧客から依頼・情報を受ける

必要な資料を確認する

不足している情報を確認する

作業内容を整理する

担当者が処理する

チェックする

必要に応じて修正する

顧客へ確認・連絡する

手続きを完了する

対応内容を記録する

次回必要な注意事項を共有する

という流れです。

仕事の流れを見える化すると、

どこで作業が止まりやすいのか
どこに手作業が多いのか
誰に仕事が集中しているのか
どこでミスが発生しやすいのか
どの仕事なら他の社員へ移せるのか

を確認しやすくなります。

繁忙期だけ頑張る状態から、事前に仕事を分散できる状態へ

繁忙期の負担を減らすには、忙しくなってから応援するだけでは十分でない場合があります。

平常時から、

業務量
作業時間
担当者
期限
他の社員が対応できるか

を確認します。

そうすることで、

「この仕事はAさんしかできない」

という状態を少しずつ減らし、繁忙期には複数の社員で仕事を分担しやすくなります。

属人化を解消するためにマニュアルを作っても、実際の仕事で使われなければ意味がありません。

大切なのは、

「マニュアルを完成させること」

ではなく、

「他の社員がそのマニュアルを使って仕事をできること」

です。

担当者の頭の中にある注意点まで残す

例えば、

「給与計算を行う」

という作業手順だけでは十分でない場合があります。

経験豊富な社員は、

どこで間違いやすいのか
どの情報を最初に確認するのか
通常と違う場合は何を見るのか
どの段階で責任者へ確認するのか

まで考えています。

そこでマニュアルには、

作業手順
確認項目
注意点
判断が必要になる条件
責任者へ確認する条件
よくある問題
過去の対応例

なども整理します。

マニュアルは完成品ではなく、更新する会社の知識

実際に別の社員がマニュアルを使うと、

「ここが分かりにくい」
「この確認項目が足りない」
「このケースも追加した方がよい」

という改善点が見つかります。

その内容を反映し続けることで、マニュアルそのものが会社のノウハウとして育っていきます。

担当者の経験を個人の中だけに残さず、次の社員へ受け継げる状態をつくります。

業務の標準化やマニュアル化は、経営者や管理職だけが進めても定着しにくいものです。

実際に仕事をしている社員が、

「自分の仕事を会社の仕組みにする」

という意識を持つことが重要です。

そこで今回の支援では、

会社の経営課題

社員の具体的な目標

日々の改善行動

達成度の確認

人事評価

賞与への反映

という流れを整えました。

例えば、

「顧客情報が担当者に集中している」

という課題なら、

「担当顧客の注意事項と過去の対応履歴を整理し、他の社員が確認できる状態にする」

という目標にできます。

「業務がマニュアル化されていない」

という課題なら、

「自分しかできない業務を1つ選び、手順・確認項目・注意点をマニュアル化する」

という目標にできます。

「繁忙期に一部の社員へ仕事が集中する」

という課題なら、

「担当業務を1つ他の社員へ教育し、繁忙期までに一人で対応できる状態にする」

という目標にできます。

「新人教育が属人化している」

という課題なら、

「新人が3か月で一人で担当できる業務を○項目まで増やす」

という目標にできます。

評価するのは、

「自分がたくさん仕事を処理した」

という成果だけではありません。

「自分の仕事を他の社員もできるようにした」
「ミスを防ぐ仕組みをつくった」
「後輩を育成した」
「ノウハウを会社へ残した」

という組織への貢献も評価します。

「自分ができる」から「人をできるようにする」へ。

個人の能力を会社の能力へ変えていくことが、人事評価を連動させる目的です。

今回の大阪府・従業員27名の企業では、

業務の洗い出し
業務プロセスの見える化
顧客ごとの注意事項の共有
繰り返し業務の標準化
チェック項目の整理
業務マニュアルの整備
複数社員が対応できる体制づくり
過去の対応事例の共有
新人教育とマニュアルの連動
人事評価と賞与への連動

などに取り組みました。

その結果、

・社員の属人化解消に対する意識が高まった
・担当者のノウハウを共有しやすくなった
・複数の社員で対応できる業務を増やしやすくなった
・繁忙期や担当者不在時にも対応しやすい体制づくりが進んだ
・会社が抱えていた課題の改善につながった

という変化が生まれました。

結果として、

売上は6,000万円増加、
利益は3,000万円増加

につながりました。

ただし、同じ取り組みを行えば、すべての企業で同じ売上・利益の増加が実現するという意味ではありません。

成果は、顧客数、業務内容、社員数、料金体系、市場環境などによって異なります。

今回の事例で大切なのは、

「専門的な仕事を誰でもできる仕事に変える」

ことではありません。

専門的な判断が必要な仕事と、標準化できる仕事を分けることです。

標準化できる業務を仕組みに変えることで、社員は本来人が行うべき判断やお客様への支援に、より多くの時間を使いやすくなります。

この考え方は労務事務だけでなく、

税務・会計
各種事務代行
人材・採用支援
コンサルティング
営業支援
Web制作
システム開発
製造業
建設業
介護・福祉

など、専門知識や顧客情報が特定の社員へ集中している企業にも応用できます。

全国のあらゆる業種の企業に対応できます。

「担当者が休むと仕事が止まりやすい」
「繁忙期になると残業や負担が増える」
「ベテラン社員しか分からない仕事が多い」
「新人が一人前になるまで時間がかかる」
「顧客が増えるほど社員の負担も増えている」
「社員を増やしても仕事を任せるまで時間がかかる」

このようなお悩みがある場合には、

「さらに人を増やすにはどうするか」

だけではなく、

「現在の社員が持っている経験や知識を、どうすれば会社全体で使えるようになるか」

という視点で組織を見直してみる方法があります。

ご相談はこちらからお送りいただけます。

Q
労務事務では、なぜ業務が属人化しやすいのですか?
A

顧客企業ごとに給与体系や勤務条件、過去の対応経緯などが異なり、継続して担当する社員の経験や記憶に情報が蓄積されやすいためです。基本的な業務手順と顧客ごとの注意事項を分けて整理することで、属人化を減らせます。

Q
労務事務の属人化を解消するには何から始めればよいですか?
A

まず、誰がどの業務を担当しているかを洗い出し、「その人しかできない仕事」を確認します。その後、業務手順、確認項目、顧客ごとの注意事項を整理し、他の社員でも対応できる仕事から標準化します。

Q
専門的な労務業務でもマニュアル化できますか?
A

すべての判断をマニュアル化する必要はありません。依頼受付、資料確認、作業、チェック、記録など共通する業務プロセスを標準化し、専門的な判断が必要な場面と責任者へ確認する条件を明確にする方法があります。

Q
繁忙期に特定社員へ仕事が集中するのを防ぐにはどうすればよいですか?
A

平常時から業務量と担当者を見える化し、一つの業務を複数の社員が担当できるようにします。マニュアル整備と社員教育を組み合わせ、繁忙期になる前に仕事を分担できる状態をつくることが重要です。

Q
業務の標準化やマニュアル化を人事評価へどう反映すればよいですか?
A

個人の処理件数だけでなく、マニュアル作成、業務改善、後輩育成、ノウハウ共有、他の社員への業務移管などを具体的な社員目標に設定する方法があります。「自分しかできなかった仕事を他の社員もできるようにした」という組織への貢献も評価することがポイントです。

土山 誠
経営アドバイザー合同会社 代表

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